MMD用PCの考察
「MMD用にPCを買いたいけど、どうすればいいか分からない……!」
そんなあなたの役に立てればいいなぁという思いと、自分で思ったことをまとめておきたいなぁという思いからできた記事です。
自作を想定していますが、まぁ既製品を買う場合でもアテになる部分はあるでしょう。
「MMD用のPCはゲーミング用のものが良い」という話はよく見かけますが、細かく書いているモノは見たことがないんですよね。そういうわけでまぁまぁレアなので参考にしていってください。
※追記
と思っていたらMMDブログ「みさきる!」さんでMMDのパソコン選びというモロな記事がありました。こちらも参考にどうぞ。
ちなみにそちらの記事でリンクが貼ってある「格安PCでやるMMD講座」という動画は私が作りました。そもそもPCを買い換えることを躊躇ってる方は見てみてください。
※追記ここまで
どういうものがMMDには必要か
先日MMD用にPCを買い替えた私ですが、ちょっと面白いツイートを見かけました。※シングルコア動作というのは誤りで、正しくはシングルスレッド動作だったようです。MMDにキレそうになったので、二度と同じ人を生み出さないように言うと、
『とにかく、早いCPUを積め…!!』
物理演算が、CPU(しかもシングルコア動作)依存だから、どんなに良いグラボ積んでも30%位しかグラボが働けなくて6fps位になる。
M M D は 周 波 数 で 叩 け
— Minaze (@MiNaMiKaZe00) April 13, 2019
前々から「MMDの起動中に妙にCPU使用率上がるなー」とは思っていたんですよ。どうやらMMDの動作の仕組みは少し変で、描画はグラフィックボード、物理演算はCPU(シングル動作)というようになっていたらしいです。
「何言ってるか意味分からん」という方に軽くだけ説明していきます。
CPU
これはPCの脳にあたるパーツです。パソコンが何かを考えるときに使われるのがこのパーツです。人からの指令をCPUくんが受け取り、なにを動かせばいいかとかの指示や計算を行うことでPCが動いています。
グラフィックボード
通称グラボ。GPUと呼ばれたりもします。こちらは映像専門パーツになります。画面に何か映したりする際に使われるのがこれ。たくさんのものが画面に映されるゲームなどでとても重要視される子です。
PCによってはグラボは搭載されておらず、その場合はCPUが映像機能も担当しています。
ただグラボが搭載されている方が映像機能が強くなり3D描画などが早くなるため、快適にMMDを動作させるためにはグラボが必要になります。
シングルスレッド動作
これは少し分かりづらい。さっき言ったCPUっていうのは小さいPCの脳が複数繋がってできています。この小さい脳を"コア"と呼びます。さらにそれより小さい脳の単位をスレッドと呼びます。
たくさん脳があることで、一度にたくさんのことが考えられるという仕組みになっています。
この小さな脳を一つだけ使う動作をシングルスレッド動作と呼ぶわけです。
ソフト一つを早く動かすためには基本的にはこのシングルスレッド動作の性能が必要になってきます。
スレッドの性能の基準となる数値は、上述したGHzという単位で表される周波数です。周波数[GHz]が高ければ高いほどソフト一個を動かすのが得意な傾向があるということです。実際にはそうではないこともありますが、とりあえずはそう覚えていてください。
MMDでの物理演算ではこの性能が必要とされるということを上のツイートで言っていたわけですね。なので改めて翻訳すると「MMDやりたかったら周波数が高くて計算の早いCPUを使え」ということです。
また小さな脳を複数使うときの動きをマルチスレッド動作と呼びます。これは主にたくさんのソフトを使う際に必要になります。
脳の数が多いと同時にできることが多くなるとイメージしてもらえるといいのですが、スレッドが多ければ多いほどたくさんのソフトを動かすのが得意なCPUになります。
また、一つのソフトだけを動かす時でもスレッドが2~3個使用される場面は結構あります。私なんかは動画編集ソフトを動かす際、動作軽量化のために12個あるスレッドを全部を動かすように設定しています。そういうことができる場面もあるよ! ということは覚えておいてください。
つまりMMD用PCに必要なモノは…
さて以上を踏まえると、こういうことになるわけです。・MMDの快適な映像出力には良いグラボが必要!
・物理演算のためにシングルスレッド性能が良いCPUが必要!(ツイートで言ってたこと)
MMDは特にグラボへの依存度が高いため、やはり最重視したいのはグラボでしょう。でもCPUのシングルスレッド性能をケチったら物理演算が重くなって結局遅いよね~という話。
これで快適にMMDを快適に行う条件は揃った! と言いたいところですが、そうではありません。
MMD動画と言っても、使用するソフトはMMDだけではありません。必ず動画編集ソフトが必要になります(メジャーなのはフリーソフトであるAvitul)。これらを使った作業、特にエンコードでは多くスレッドがある方が有利です。また、MMDにおいても物理演算以外はマルチスレッド動作を行っています(とはいえそこまで重視されませんが)。
そういうわけでツイートには乗っていない話ですが、個人的な付け加えです。
・編集ソフトのためにマルチスレッド性能も捨てたくない
MMD用のPCを作るにはこれら三点をおさえましょう。
MMD用PCパーツ
さてじゃあ三つを守るためには実際のところ、何を使えばいいんだよという話です。具体的な商品名を挙げていきます。値段は2019年8月末基準です。
なお以下では予算10万円ほどを想定して書きます。それ以上のお金をかけて高スペックを求めるなら話は全然違ってきます。RayMMDなどの統合型エフェクトを使いながら4K出力するなら20万PCが必要になりますが、そんなん要らんわというなら10万円で十分。また、パーツを何個も買うよりもBPOショップで似たパーツを揃えたパソコンを買う方が安くなる可能性もございます。無理に組む必要もありません。
MMD用CPU
超安くそれなりのモノが欲しいのならRyzen2世代! 良いモノが欲しいのならRyzen3世代!
世はRyzenの時代!!
さて、おさらいですがMMDにおいてはシングルスレッド性能が求められます。
そのため周波数が高ければ高いほどMMDをやるにふさわしいCPUということになります。
CPUは基本的にIntelのcoreシリーズ、AMDのRyzenシリーズがメジャーです。この二つのCPUの特徴をかなりザックリと挙げると以下の通り。
・coreシリーズはスレッド一つ一つの性能が高いcoreシリーズというのはi3、i5とかいうお馴染みのCPU。
・Ryzenシリーズは値段の割にスレッド数が多い
Ryzenシリーズはここ数年で流行り始めたCPUです。留意点が一つあるのですが、Ryzenには基本的にグラフィック機能がついていないためグラボがないと映像が映りません。どうせグラボを買うなら関係ない話ではあるのですが。
上述の通りMMDではCPUのシングルスレッド動作が重要になります。というわけでcoreシリーズがいいのかなぁなんて思いきや、今は事情が変わってきております。
2019年7月にCPUの環境は大きく変わりました。
ここ最近でのRyzenの急成長が凄まじく、特にコスパにおいては他の追随を許さない状態です。
比較的買いやすい値段のCPUで比較しましょう。
=30000円付近=CineBenchR15というのはCPU評価テストの一種です。Singleがシングルスレッド動作、Multiがマルチスレッド動作の性能を表します。ベンチマーク結果は海外サイトから引用しました。参考程度に見てください。
「Ryzen5 3600X」30500円
3: 世代数。最新世代が3
600: 性能値。600はRyzen5の中で最高
X: 強化版の意(そういうことにしておいてください)
・パラメータ
周波数:3.8~4.4GHz
CineBenchR15Single スコア:202
スレッド数:12
CineBenchR15Multi スコア:1795
「i5-9600K」28900円
9: 世代数。9は現在の最新世代
600: 性能値。600はi5の中で最高
K: 強化版の意
・パラメータ
周波数:3.7~4.6GHz
CineBenchR15Single スコア:200
スレッド数:6
CineBenchR15Multi スコア:1068
見てわかるように、Ryzenは値段に対して性能が高い=コスパが良いです。
特にマルチスレッド性能は凄まじく、同価格のcoreシリーズと比べると大きく差が開きます。
MMDにおいてはシングルスレッド性能が重要ですが、ベンチマークスコアを見るにcoreシリーズとほぼ同じなのです。スコアを信用するならRyzenが上位互換と言えます。
さて買いやすいとは言ってもパーツ一個で3万円はちょっと高いでしょうし、このCPUたちはTDP=必要電力が95Wである関係で少し組むのが面倒になります。
グレードを落としたCPUも見てみましょう。以下のCPUは必要電力65Wです。
=ミドル帯=一押しはRyzen5 3600。というのもこいつ、破格のコスパであることが良く分かるでしょう。同値段のi5-9600の上位互換ともいえるベンチマーク数値を叩き出しています。
「i5-9600」26900円
・パラメータ
周波数:3.1~4.6GHz
CineBenchR15Single スコア:186
スレッド数:6
CineBenchR15Multi スコア:1042
「Ryzen5 3600」25700円
・パラメータ
周波数:3.6~4.2GHz
CineBenchR15Single スコア:197
スレッド数:12
CineBenchR15Multi スコア:1581
=格安帯=
「i5-9400F」17900円
・パラメータ
周波数:2.9~4.1GHz
CineBenchR15Single スコア:177
スレッド数:6
CineBenchR15Multi スコア:987
「Ryzen5 2600」15000円※型落ちの影響で激安
・パラメータ
周波数:3.4~3.7GHz
CineBenchR15Single スコア:163
スレッド数12
CineBenchR15Multi スコア:1307
私が実際に使っているのはRyzen5 2600です。1年ほどMMDをやってきましたが、物理演算が重くなったという体験は一度もないんですよね。スカートの物理付きモデル4体読み込んでも30fpsは保てます。大群を読み込むとなれば話は別でしょうけど、現状は不足ありません。
ちなみに当時22000円で買ったのでやらかしました。
そういうわけで私個人としてはRyzenが断然おすすめです。
MMD用グラボ
グラボでもコスパを求めるならやはりAMD製! より安定を取るならGTX
MMDにおいてグラボのシリーズは二択です。AMDのRadeonシリーズ(RX)、もしくはGeForceのGTXシリーズ(GTX-○○というやつ)を使いましょう。これを買っておけば問題ありません。
~~~読まなくてもいい理屈~~~
「なぜか」と言いますと、これはMMDのプログラミングの問題です。
3Dグラフィックのソフトでは”DirectX”と”OpenGL”という2種類のライブラリのどちらかが使われます。ライブラリというのはプログラムを作る際に使う便利ツールのことです(そういうことにしておいてください)。上記二つのグラボシリーズはこのDirectXと相性が良くなるように設計されています。
で、MMDはDirectXを使って作られています。つまり、GTXとRadeonはMMDと相性がいいということになりますね。
ちなみにDirectXはゲーム開発でよく使われるライブラリです。その関係でゲーミングPCではGeForceやRadeonがよく搭載されています。ゲーミングPCはMMD向きであると言われることが多いのですが、それはこういった理由があるためですね。
~~~~~~ここまで~~~~~~
細かい話を抜きにMMDにおけるグラボの性能を見たい方はこちらのドラクエXベンチマーク、PSO2ベンチマークをご覧ください。
両者ともにはMMDと同じDirectX9環境のゲームです。ドラクエXはCPU依存率が高め、PSO2はGTXがスコアを伸ばしやすいという特徴があるため参考程度に。
さてそれではまずGTXシリーズについて説明。
PCパーツというのは名前で性能がわかるようになっています。GTXシリーズは以下の通り。
「GTX-○○××」ざっくりとですが、××が60以上だとPCガチ勢の買う商品です。値段も結構高い。
○○: 世代数。高ければ高いほど新しい。10が現行世代。16や20はパワーアップ版。
××: 性能値。高ければ高いほど性能が高い。30~80で表す。
○○の数値が基本的に10以上のものを買うといいでしょう。
私が使っているのはこの中間モデルにあたるGTX-1050Ti。現在はその強化版、GTX-1650が販売中です。価格は15000円ほど。
実際に使った時の動作は「モデル二体(軽めのシェーダ付き)をブラーとパーティクル使って戦わせて1080p出力しても大丈夫」という具合。ビームマンさんのWindやSimplemagicはヘッチャラ、ただBigExprosionのNuke2 Toonはグラボ使用率が100%になってカクつきます。
かなり重いエフェクトを使う気がないのなら、GTX-1650で十分に作業できるでしょう。
上述のBigExprosionやNCHLシェーダーなどのエフェクトを派手に使いたい場合には1050Tiやその強化版の1650では不足するでしょう。もっと高位のモデルを買うことを勧めます。
が、1060以上は値段がグンと上がるし、電力が多く必要になったりファンが2つになったりします。それでもやりたいか? ということはしっかり考えて買い物しましょう。予想にはなりますが、GTX-1660Ti(30000円)なら基本的にMMDで不足はないはず。
ちなみにGTX-1080レベルのグラボは買ってもMMDには恩恵がないという説が濃厚です。おそらく無駄にならないラインはGTX-1660Tiでしょう。MMDを最高の環境で動かしたい場合は1660Tiを買いましょう。それより上のグラボを買っても無駄です。※MMMを使用する場合は別です!
~~~読まなくてもいい理屈~~~
というのも、MMDで使われているライブラリがDirectXの中でも古いタイプであるDirectX9だからです。これは当時のグラボの性能に合わせて作られたライブラリなので、現行のDirectX12なんかと比べると処理がとても軽いです。だから今の時代のハイスペックグラボでは能力を使い余してしまうのです。
それに最新グラボはDirectX12、11などに対して最適な設計が成されています。今どきDirectX9に最適化されたパーツを作っても売れないのですよ。
上記のドラクエ10ベンチマークで言えばいくら高いグラボを使っても20000ちょっと超える程度のようです。そういうわけであんまりDirectX9、というかMMDには恩恵ないんじゃないかな~という話。
~~~~~~ここまで~~~~~~
=20191123追記=
GTXの話ばかりになっていますが、グラボでもやはりAMDの時代はやってきつつあります。格安グラボで言うならば現在ならRadeonがとても強いです。
そんなRadeonシリーズの命名規則はとてもややこしいため、主な商品を性能順に書いていくことにします。
RX 5700世代で言うと4<5<Vega<5700です。
RX Vega 64(GTX1080より上くらい)
RX Vega 56(GTX1070相当)
RX 590
RX 580(GTX1060と同等)
RX 480
RX 570(GTX1050に勝つ)
RX 470
察していただけると思いますが、5世代まではGTXシリーズと似たような名前の法則が通っていたはずなんですよね。なんでこうなった。とても分かりにくい。
今回お勧めするのはその中でもRX570というグラボです。性能はGTX1050Ti以上1060以下といったところ。
なんと今なら15000円で買えます。
RX570は少し昔のハイエンドパーツなのですが、現在投げ売りされています。投げ売りはいつ終わるか分からず、現在なら一押しパーツと言えるでしょう。
MMDにちょうどよいレベルの性能のグラボが格安で手に入るとあれば、しっかりチェックしておきたいところです。
なんでこんな安くなったかって言うとマイニングとかマイニングとかマイニングとかのせいです。
注意として、RX570は性能の割に使用電力が多いことで有名です。
その使用電力は性能では上に当たるGTX1060よりも多いほどです。消費電力が多いとなにが問題かって電気代がかさむこともそうですが、電源構成とかがめんどくさくなります。あと熱くなりやすいのでファンが二つに。
高性能なグラボであればみな一様にこの悩みに直面いたしますが、RX570に対しては「性能の割にじゃじゃ馬…」とすこーし思ってしまうところです。
安いのは今だけとはいえ、後悔しないように安定性や価格を考えて見てください。しかしそういう悩みを抱えていても15000円でこのグラボが買えるのはあまりある魅力です。
MMD用その他パーツ
他のパーツについてもさらっと話していきます。・メモリ
私は8GBまでしか買っていませんが、不足したことはありません。メモリをたくさん使うことで有名なchromeをMMDと同時に使っても余っています。
買って損はないので16GBにしてもいいんじゃないでしょうか。
・記憶媒体(HDD or SSD)
最近はSSDがHDDに取って代わりそうになってきています。データの読み込み速度がHDDよりとっても早いそうです。
ただMMDでは読み込み速度はあまり重要視されません。
~~~読まなくてもいい理屈~~~
MMDでのモデル読み込み方法は一度だけ参照をして、あとはメモリにデータを格納して動かすということになっているようです。
その証拠にMMDでモデルを読み込み、その後でモデルを改造して上書き保存してもMMD上でのモデルには変化はありません。手動でモデルを読み込み直さない限りは改造データは反映されないのです。
そのためデータの読み込み数が少ない=読み込み速度があまり影響しないということになります。
~~~~~~ここまで~~~~~~
MMDだけを考えるならHDDで構いません。
ただ最近は本当にSSDも安くなってますし、衝撃に強いというメリットもあります。どうせ組むならSSDにしていた方が良いです。PCの起動がとても早くなりますよ。
・マザーボード
はっきり言ってよく分かりません。私は6000円の安めのマザーボード使ってます。
CPUへの供給電力=API、拡張メモリの有無、対応メモリなどを確認して不足がないように買ってください。
・電源
ここはケチらないように。変なのを買うとPCパーツが全部壊れます。
計算した電力に不足なく、かつ熱処理しっかりしてそうなやつを選びましょう。ちなみに私は計算がめんどくさくてデカめに定格600Wの電源を買いました。あとで計算したら使用電力は200Wほどだったので相当余ってますね。
・ディスプレイ
私には分からない領域ですので別の方に聞いてください。
さてこんな感じです。参考になったでしょうか。
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