「トップをねらえ2!」第3話 チコサイエンスについて
あまり騒いでいるものだからフォロワー諸氏も観劇してくれているようであり、毎日とても嬉しいかぎり。
さて、この作品。とても面白い作品で、中でも第三話についてはそれはもう、とんでもないほど好きになってしまい一時期狂ったように見ていました。劇場公開では二回見て二回泣いた。
もう本当にね。語りたい部分が特段に多い。もう一回記事にしてしまおうということで久々にブログを立ち上げています。
※↓以下微ネタバレあり↓
トップをねらえ2!について
トップをねらえ2!は「2」というだけあり前作トップをねらえ!とリンクした点もありますが、監督や作風、ストーリーの趣旨などもずいぶん変わったものになっています。それでもトップをねらえ!らしい要素を大げさなまでに拾っているのが今作の面白いところですね。おおまかに、今作は宇宙パイロットに憧れる主人公ノノとバスターマシンと呼ばれる兵器を操り宇宙怪獣と戦う超能力者「トップレス」の少年少女たちの物語です。
トップレスは子供のうちにしか発現せず、彼らにしかバスターマシンは動かせない。そんな才能に恵まれた子供たちと努力と根性で夢を追いかけるノノがストーリーの主軸になっています。思春期の全能感が大好物のオタクに非常にオススメです。
さて本作はそんなストーリーになっていますが、今回語る第3話に関しては本筋から外れていると言ってもいいでしょう。総集編では丸々カットされているほどです。
不出来か?と言われるとそんなことはまったくありません。公式資料集にて「シリーズ全体のテーマと三話の内容が同じだから」「単独の映画になるほどのボリューム」とさえ書かれています。
私もそう思う。トップをねらえ2!第3話は最高だ。
第3話についてざっくり
第3話に出てくる宇宙怪獣は木星急行。太陽系周辺を楕円軌道で周回し、90日周期で木星周辺を通過する大量の群れです。これらを退治するため、トップレスたちが木星に集まり作戦に挑むというのがおおまかなあらすじです。今話はメインキャラの一人、チコ・サイエンスというキャラが主人公になっています。
メインキャラ、とはいうものの実際のところ彼女に目立った出番があるのは今話くらいなもの。これは前作のメインキャラのユング・フロイトが似た立ち位置なのでそれを踏襲したものでしょう。
冒頭はチコが単独行動に走って宇宙怪獣の群れを一気に退治して撃墜スコア一位を目指そうとするも失敗。バスターマシンを大破させるシーンから始まります。
この失態により木星急行の殲滅作戦にあたりバスターマシンが一機足りなくなってしまったが、新造されたバスターマシン「キャトフヴァンティス」が到着。新たなバスターマシンのパイロットになろうとチコとノノは意気込みます。
そんな中、病院で暮らす子供たちがトップレスであるチコに対し「雪を降らせてほしい」とお願いをします。しかしチコはこれを断じて聞かず。安請け合いしようとするノノを張り倒すまでの苛立ちを見せます。
トップレスにより全人類を幸福と繁栄に導くことをここに誓います。そんな宣言に怒りをむき出しにするチコの心境は果たして……。
というストーリーです。見てない人類は今すぐ見ろ。アマプラレンタルで見れるぞ。3話だけ見るのも大いにありだ。
※↓以下重大なネタバレあり↓
チコが気付いたこと
もう全員見た前提で話すがキャトフヴァンティスの目覚めからの流れヤバくないか????????????????ええ、ほんまに。
チコが何に怒っていたのかここで解明される。チコは昔の自分に怒っていたんです。
宇宙放射線病の子供に「一緒に雪だるま作りに行こう」と”出来もしない約束”をして失望させてしまった過去の自分が大嫌いで、それを否定するべく「トップレスなんて無力だ」と言うためにスコアを稼ごうとしていた。トップレスなんて大嫌いの意味がとんでもないことになってしまったが?????
彼への思いはピアスとして残っている。どんなにスコアを稼ぐチャンスだろうとピアスを拾いに行ったあたりからもその思いの大きさは推して知るところですね。
そんな現在のチコへ、ノノは例のポーズで告げます。
「自分を信じることが出来ない者に、バスターマシンは力を貸しません」バスターマシンは決して、自分を否定するためのものではない。自分を傷つけ続けるチコをノノが見抜いた瞬間とも言えるでしょう。自分を否定するためでないのでならなんのために乗るのか? その答えは、チコがキャトフヴァンティスへ語り掛けています。
ちなみにこの一連のシーンの意味を知るための副読作品としてトップをねらえ!第五話を勧めます。
涙とともに自分の本心を吐露し、チコがピアスを捨てるシーンはそれはもう素晴らしいシーンです。このシーンは過去の切り捨てです。過ちを乗り越える覚悟をチコは決めたのです。
そしてキャトフヴァンティスはバスタースマッシュを放つ。チコはその最中で過去の追走を体験し、「似合わない」と彼が笑った真相をようやくここで知ります。そうしてアホウドリがはしゃぎまわってこう言うのです。
「この雪だるま! こーんなに優しく、笑ってるんですよーー!!」泣くだろこんなん。
ピアスじゃないから似合わない。あの木彫りのアクセサリは雪だるまのパーツだったのです。
宇宙放射線病の彼は最初から、一緒に雪だるまを作ろうとしていたんです。一緒に外で遊べることを楽しみにしていたのか、いなくなっても一緒に作れるように残していたのだろうか。いずれにせよ、チコが否定しようとしていた幼い言葉で彼は未来を見ていたんです。
そしてチコは笑顔を見せます。
チコは過去を否定するでも、乗り越えるでもなく、受け入れることが出来たのです。
四話以降のチコはノノとラルクの二人の仲に寄り添い、予知能力に長けた自らの適性に沿った司令塔という役をこなすようになります。前に出てスコアを稼ぎにいった自分を否定してきた今までとは違う、自分を信じた役目を果たそうとチコが変わっていくのです。
なんでもないはずのシーンが途端に全てハードパンチとなってこっちの感情を揺さぶってくるんだけど俺はどうしたらいい???????? これもユングフロイトの踏襲だな?????????
早くチコ・サイエンスから解放してくれ。
戦闘経験値がないキャトフヴァンティスが放つバスタースマッシュをコントロールするのはチコの思いと力でしょう。チコの得意分野は予知。マイナス1兆2000万度の特異点の中で過去との対話を可能にしたのはその辺りが関係しているのかもしれません。ちなみにこれは嘘です(最後の方を参照)。
第3話における子供と大人の対比
トップをねらえ2!が全話通して描いているのは才能あふれるトップレスの子供たちと大人の対比です。たとえば第1話ではノノにデレデレしながらからかう情けない大人たち、第2話では大人としてプライドを見せるハトリ大佐などがトップレスらの比較対象として出てきます。
第3話ではどうでしょう。私が思うに、ノノ+病院の子供たちとチコが対比になっているように思えます。
パイロット候補としてライバルになった二人ですが、その感情は対照的。
ノノは終始はしゃぎっぱなし。宣誓式でのお姉様の様子を見て目を輝かせ、バスターマシンのパイロットになれるかもしれないと駆けまわり、子供たちのお願いに「かわいい!」と嬌声を上げる。
この話の作画では瞳がまんまるのノノがめっちゃくちゃに多い。かわいいね。カシオも「ノノちゃんは和むなぁ」なんて呟いています。とにかくピュアで、前向きに生きているのがよく伝わってきます。子供らしいですね。
病院の子供たちも同じくでしょう。「雪を降らせてほしい」「降ってきたらとっても綺麗だと思う」なんていう三人らの願望はとても可愛らしいものです。
一方でチコ。皮肉を言うわ、ぶつくさ文句を続けるわ、とにかくチコは態度が悪いに尽きる。子供たちの夢やノノの希望を一蹴し、スコアという数字を追い求めているサマはとても現実的です。
しかしチコが大人か?と言われればそんなことはまったくないでしょう。
そもそも開幕から勝手な行動でバスターマシンを壊しておきながら駄々をこねる始末。その後、舌打ちするシーンもあればドアを乱暴に叩くシーンもある。怒りに戦慄く場面は何度あったでしょうか。
見た目通りのわがままなガキ。私が3話を初めて見ている際の印象は最悪なものでした。
ノノ達は素直な子供|チコは生意気なガキという構図になっていますね。しかし先述したチコの気付きを踏まえると別の見え方ができてきます。
4話以降のチコは極めて大人です。自分が前に出るのではなく、最年少にしてノノとラルクのお姉さんのようにすら見えてきます。それはやはり3話があったからでしょう。
かつて自分が持っていた素直な心を肯定できるようになって、チコは大人になったのです。
となるとどうか。3話の構図はノノ達は大人になるためのモノを持っている|チコは失ってしまったではないか。
ズレた発想でしょうか? きっと最終話まで見た人はそう鼻で笑うような結論ではないでしょう。ノノリリが特異点を輝かせることが出来たのは愛と努力と根性があったからです。ノリコがトップ!最終話で笑ったのもそうです。それならばチコが3話ラストシーンで笑えたのも、大人になれたのも、似たようなことだと私は思うのです。
まとめ
第3話がシリーズのテーマを全て内包しているという話にはすごく納得が行っています。だってチコは思いを受け取って成長できましたから。これはとてもトップをねらえ!らしい話で、受け取ったものを大事に心にしまって子供から大人になっていくという面では実にトップ2!らしいところでもあります。
この話まででチコがピアスをつけていることと、この話以降でピアスをつけていることは全然意味が違うんです。早く3話にどっぷり浸かってその他の話すべてのチコ・サイエンスで大ダメージ受けるようになれ。そういう呪いを込めた記事です。
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